情死

Would you cry if I died Would you remember my face?

2021年12月19日 その2

絶対に書かないといけないことを記し忘れていました。書きます。

 

 

Web詩誌「傘と包帯」第十集が公開されました。今回が最後となるようです。今回も私、清水優輝名義で参加しています。以下にリンクを貼っておきます。

※だんごちゃんはニックネーム、清水優輝はペンネームです。

 

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私は短編小説を書き下ろしました。小学生の作文を意識して書いたので、割とさくさく読めると思います。よろしければぜひ。かさほたが最終回であることをかなり意識しています。

 

☆ ☆ ☆ ☆

『傘と包帯』が始まったのは、2017年4月でした。本当に有難いことに初回から最後まで参加することが出来ました。当時の私はまだ大学に通っており、これからどうやって生きていくのか不安でいっぱいでした。また、文章を書くことについて全くと言っていいほど自信がありませんでした。ちゃんと作品として詩を書き、提出したのは『傘と包帯』が初めてだったと思います。私はただブログを書き散らすことが好きなだけの、よくいる暗い文系女子というか、そういう人でした。偶然、早乙女まぶたさんがツイッターを経由してこのブログに辿りついて、私に参加しないかと声をかけてくださったからこそ、創作活動をするきっかけの一つとなり、ブログを続けていくことができました。
参加者は早乙女さんの意思ひとつで決まっています。これまでずっと詩作していた人も当然いますが、私と同じように創作経験がさほどなかったけれど『傘と包帯』をきっかけに詩を書くようになった参加者もいると思います。声をかけてもらえて、発表の場を与えて頂けることで、どれほど勇気を貰えたか。ありがとうございました。

☆ ☆ ☆ ☆

 

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せっかくなので、今回のかさほたで気に入った作品の感想を書こうと思います。
と言って、早乙女さんの詩を載せるのはかなり恥ずかしいのですが。(だって、わかるでしょ?)まあ、最終回くらい大目に見てください。


『無の肖像』は7つの連で構成された詩で、構成が見事だと感じました。1連目から順番に説明と感想を書いていきます。

 

「水槽の中で傘をさした
 痛みが入ってきそうだったから」

「いつからかぼくは
水に逃げたさかなだった」

詩の冒頭で、この詩の語り部は何かを忌避をして閉じこもっていることが描かれます。本来水の中で生きる魚が水から逃げている、と言った想像すると奇妙で不思議な表現の面白さが早乙女さんの詩の楽しみのひとつです。
また、かさほたの「傘」が使われていますね。


そして次の連の始まり、

「耐え切れない弱さ
朝が来る前に睡眠薬を灯す」

この言葉選びに私はやられました。「睡眠薬を灯す」、最高です。一般的ではない言葉のつながりが幸福に出会い、結ばれています。
2連目でも、語り部は現実から逃避しているようです。それもすごく弱々しい。


しかし、語り部はずっと逃げているわけではないようです。3連目から詩は展開していきます。
3連目では、語り部=ぼくの一人称が登場します。そしてきっと内省していたようです、現実から逃避するぼくの姿を。「夜」「鏡」「風」がとても象徴的で、想像するのが楽しい。


4連目をそのまま引用します。

「ごめんねもう少しだけ生きていてね
世界に火をつける」

早乙女さんの詩はこのような、読んだ人を引き付ける強い言葉が必ず含まれていて、『無の肖像』ではここがそれに当たるのではないかと思います。全体の流れを変えるキーワードであり、その役割にふさわしい優しくてインパクトのある言葉。


そのインパクトの勢いに背を押されるように5連目は綴られていく。ぼくが逃避を止めて先に進もうとする意志が、音や美しい幻想と共に描かれます。まるで、それまで停止していた風車が風を受けてからからと回るようで、スピードがここから生まれています。

「ここからはもう目を逸らして
ずっと先の青空を見よう」
本当にきれいだと思う。

6連目では、「一言分の光」の粒子が「最後の不安」と結ばれて「夜の向こう」へ昇る。ぼくが昇華されていく。この「一言分の光」はきっと「青空」から得られたもので、これまでずっと眠っていた、俯いていたぼくが顔を挙げて上を見つめているような、この視点の動きがいいなあと感じました。

「ぼくも滅びゆく世界のひとつだったこと」

この言葉は、悲しい響きを持つように聞こえるけれど早乙女さんにとっては希望の文脈を持つものだと思います。ぼくは希望のような、光のようなものを思い出せた。

 

そして、終わりの7連目。かさほたの「包帯」の言葉が使われています。「傘」「包帯」は自分自身を覆うもので、その下の隠されたものこそに魅力があるという意味で理解していますが、まさにぼくは「傘」や「包帯」から解き放たれたのでしょう。

「ひとつの水滴が海に隠れるように
さかなは世界にとけた」

1連目と呼応するように「さかな」が使われており、全体のまとまりが出て読了感が爽やかですね。

詩の全体の流れ、ぼくの気持ちの動き、そして言葉同士の響きやイマージュの美しさが均等取れて書かれており、本当によいなあと思いました。
こんなごちゃごちゃ説明しましたが、ただ文字を眺めるだけでも素敵な詩です。ぜひ読んでみてください。また、これはあくまで私の一感想なので、正解ではないです。あなたはどの部分が気に入りましたか?

 

第十集までおつかれさまでした。

 

■参考URL

「傘」「包帯」の意味について

序文・鳥籠ラストページ|kasatohoutai|note

 

「一般的なつながりから離れた言葉の使われ方」について

序文 星座づくり|kasatohoutai|note

 

「滅びゆく世界のひとつ」について

S1E8 すべてがなくなって、詩人になるのってどんな感じですか?早乙女まぶたさん - YouTube

 

それでは。