2020年3月2日
だんごちゃんは泣いていました。ずっと泣いていました。何が悲しくて泣いているのかも分からず、声をあげて泣いていました。うわんうわんと喉が枯れるほど泣きました。目はぱんぱんに腫れています。悲しくて悲しくて涙が止まらないのです。ごはんを食べることも、ねむることもできず、ただずっと泣き続けています。
だんごちゃんは泣いていました。目をゴシゴシと拭うと目の前に少女が現れました。少女は一輪の花を持っていました。笑顔でした。そして言いました。
「だんごちゃん、あいしているよ」
少女はだんごちゃんに花を手渡して、どこかへ立ち去りました。だんごちゃんがあっけにとられている間もなく、すぐに白い髭を生やした老人がやってきました。
「だんごちゃん、あいしているよ」
老人もだんごちゃんに花を渡しました。気づくと、だんごちゃんの周りにはたくさんの人が集まっていました。そして花を持っていました。
「だんごちゃん、あいしているよ」
「だんごちゃん、あいしているよ」
「だんごちゃん、あいしているよ」
みんなそうして花をだんごちゃんに手向けるのです。地球に住むすべての人がだんごちゃんの許に訪れました。だんごちゃんはたくさんの花に囲まれてうれしそう。涙も止まり、だんごちゃんに笑顔が戻ってきたのです。
夢見心地のだんごちゃんのところに、最後の一人がやってきました。その人はよく知っている人でした。かつてあいした人でした。
「ななこ、もう大丈夫だよ」
彼はそういって、だんごちゃんを抱き締めました。
だんごちゃんは暖かい腕に蕩けて消えていきました。
おしまい