情死

Would you cry if I died Would you remember my face?

手紙没案

共用ブログ「うまくいえないひとたち。」にて手紙企画に参加させて頂きました。

あっちは明るい(明るい?)話にしたのですが、本当はこっちが元々考えていたお話です。暗くて嫌な感じだったので没にしちゃったのだけど、折角なので載せておきます。

 

 

 

 

 

 

 

父へ

 

 お久しぶりです。電話かメールをしたかったのですが、どうせお父さんのことだから携帯電話をどこかに忘れて所持していないと思い、手紙を出しました。

 実家を出てからもう3年が経ちましたが、一度も帰っておらず心配かけているかと思います。元気にやっております。そろそろ仕事にもなれてきたので、今度引っ越すことを検討しています。

 あなたはよく落し物をしますね。上野駅では上着のポケットから一円玉を落としました。新宿駅ではリュックサックから緑色の袋に入った喉飴をぽとりと落としていましたね。秋葉原駅ではビニール傘をベンチに置きっ放しにして乗車し、横浜駅では腰に巻いた上着を落としていきました。そのときはさすがに後ろに歩いていた方に拾って頂いたようですが、その後もちゃんと上着を持っていますか?心配です。

 あまりに目に余るために私はあなたの落し物を全て回収することに決めました。昨年の6月のことです。とは言え、私にも生活がありますのであなたの社内やキャバクラでの落し物については存じておりません。私が見ていない間に重大なものを落としていないといいのですが。

 今日に至るまで手袋やマフラー、缶チューハイUSBメモリー(中身は大したものじゃなかったのでよかったです)鉛筆、手紙や写真、煙草、お守り、肩叩き券など、さまざまなものを落としていきました。自覚はありますか。あったらこんなに落とさないですかね。とにかくあなたの落し物はすべて私の家にありますので、引っ越しの前に取りに来てください。

 最近、身の回りのことをご自分でやられているんですよね。あんなにお母さんに頼りっぱなしで偉そうにしていたのに。想像もできません。というか、やってないですよね。あなたが出来るわけないですものね。なんでそんな状況になっているかちゃんと胸に手を当てて考えて下さい。

 あなたの一番大切なものを我が家で預かっています。泣いています。なぜ私を落としたのかと泣いて、精神科で睡眠薬を貰ってきました。もう二度と落とさないという約束ができないなら私の新居に一緒に引っ越します。あなたとは縁を切るそうです。あなたが正しい判断を下せますように。

 それでは、待っています。

 

 


娘より