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情死

Would you cry if I died Would you remember my face?

2016年3月3日

今日は雨が強い。ワイパーが忙しなく動く。街燈の光が道路に反射する。対向車は居らず、1人静かに走る。いつもの仕事帰りである。暫くすると、遠くに黄色い傘を持った小さな子供の姿を発見した。この辺りは、お店も家も無いはずだ。不審に思い、自動車を近くに止めて、子供の前へ行った。傘から顔を覗かせたのは、小学校高学年くらいであろう少女であった。頬は寒さで赤くなり、二つの小さな手で傘の取っ手をぎゅっと握っている。茶色いランドセルは、雨にさらされており、運動靴もびしょ濡れであった。困ったような表情で、こちらを見つめる。

 

「お嬢ちゃん、こんなところで何をしているんだい。」

「パパを待ってるの。」

「パパは何時来るんだ?」

「分からない。でも、来る。」

「どんな車で来るか分かるか?お嬢ちゃんはどこに住んでるんだ?」

「分からない。パパが住むところ。」

 

少女の言っていることはまるで理解が出来なかった。とにかく、パパを待っているらしい。すでに21時を過ぎている。雨の中、ずっと少女を外に置いておくわけにもいかず、私は少女を我が家へ連れていくことにした。

 

「おじさんが、私のパパなの?」

「違うぞ。私には高2の息子と中3の娘が居る。お嬢ちゃんは兄弟はいるか?」

「私の兄妹は高2のお兄ちゃんと中3のお姉ちゃん。」

「うちと一緒なのか?」

「私のパパはおじさんだもの。」

 

少女を家にいれた。少女は靴の踵をきっちり揃えた。今晩は、妻が家にいない。大学時代の友人と旅行に行っているのだ。子供たちはすでに個々の部屋で夜の時間を過ごしている。少女は、洗面所で手を洗った。靴下を脱ぎ、洋服も脱ごうとした。

 

「パパ、ずっとお外に居たからとても寒いの。お風呂に入りたい。」

「私はパパじゃない。自由に入れ。」

「パパと入りたいの。」

 

子供とお風呂に入るのは何年ぶりであろうか。娘はませていたので、小学校上がったらすぐ一緒に入浴することを拒んだ。少女の身体は、未熟ながらも艶らしく線を描いていた。私は少女に言われるがまま、少女の髪の毛から爪先までを洗った。傷が付かぬよう丁寧に優しく撫でた。少女は泡に包まれた身体を見て愉しそうに笑う。

 

★★★